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4月13日(木)クリエイトジャパンブログ


タンス預金をしないオーストラリア人

しばらく日本一時帰国中につき、今回は日本のテレビ番組を観ていて思ったことを書き連ねてみようと思います。

 

先日ある民放の番組で、日本の経済が低迷している一つの要因として、想像を絶する額の現金がタンス預金されている、という話題が取り上げられていました。解説をしていた経済評論家が言うには、全国民のタンス預金を合計すると何兆円にも達するのではないかとのことでした。その真偽のところはわかりませんが、控えめに考えても相当の現金が各家庭に保管されていることは間違いないと思います。少なくとも数万円から数十万円、家庭によっては百万円を超えるケースもあるのではないでしょうか。その番組によると日本政府は戦後になって国民に貯蓄を推奨し始めたらしく、消費は贅沢であり貯蓄は美学であるという戦後の考えが今も尚代々親から子へ受け継がれているのではないか、と解説者の話を聞いてふと思いました。筆者自身も贅沢は敵、という風潮の中で育った世代です。

 

一方オーストラリアはどうかというと、タンス預金ゼロとまでは言いませんが、このような習慣はあまり聞きません。数百ドル(数万円)の現金を保管している家庭はあるでしょうが、数千ドル(数十万円)の現金となるとそれほど多くないのではないかと思います。数万ドル(数百万円)以上となるといささか怪しいお金かもしれません。預金は給与などが振り込まれる普通預金(こちらに大金が入っている人は少ないと思います)や、普通預金よりも金利の高い定期預金などもありますが、ずっと低金利が続いているので人気はありません。ではどこに預けたり投資しているかというと、その大半は不動産であり、それに加えて債権、株、仮想通貨、スーパーアニュエーション(年金)などです。

 

スーパーアニュエーション(オーストラリア確定拠出年金)は日本の厚生年金に近い制度ですが、お金を預ける年金基金は民間企業です。例えばお給料が月給40万円の場合、雇用者は月給とは別に月給の10.5%の4万2千円をスーパーアニュエーションとして、被雇用者が指定した年金基金に3ヶ月分を3ヶ月ごとに払い込まなければなりません(現在は10.5%ですが、2025年までには12%に引き上げ予定)。この制度は正社員だけではなく、契約社員やアルバイトなど全ての労働者に対して支払う義務があります。つまり時給2,200円のカフェのアルバイトであっても、実質は時給2,431円となります。もちろん日本人の学生やワーキングホリデーにも適用される制度ですので、彼/彼女が永住しない場合は、帰国時に返金を申請できるシステムで、高額なタックスは引かれますが本人の口座などに戻ってきます。

 

お給料とは別に自動的に10.5%のお金が年金基金に振り込まれますが、それ以上の額を個人の判断で積み立てることも可能ですので、投資としても活用できます。この辺りは日本のiDeCoに似ているでしょうか。ハイリスクハイリターン、ローリスクローリターンなど、自分の好みに合わせてどのタイプの投資を選択するかは自由ですが、基金の経営状態が悪かったり、極端に運用利回りが低かったりすると政府から指導が入り、その基金の利用者に対して他の基金に切り替える検討をするよう案内が届くので、投資とはいえ比較的安心して預けることができます。

 

ちなみにオーストラリアにはエイジド・ペンション(Aged Pension)という別の年金制度がありますが、これは全て税金で支払われますので、永住権保持者で10年以上の滞在実績があれば、政府が定めた資産や収入をオーバーしていなければ、受給資格がある年齢に達した全ての国民に対して一定額が支給される制度です。いろいろ細かなルールがあり規定に沿って減額されますが、仮に満額受給される場合は夫婦で年間336万円ぐらいになります(為替レート1豪ドル90円の場合)。このような社会福祉制度の充実は、全国民の将来や老後の不安を払拭し、ついては老後を迎える前のホリデーや趣味などに費やす時間やお金にも好影響をお及ぼしているものと思われます。

 

話は戻りますが日本の番組に出演していた経済評論家によると、タンス預金というのは経済のためには何の役にも立ってないとのことでした(当たり前のことですが)。むしろ強盗などの犯罪を誘発したり、災害や火事によって現金が消滅したり、経済面でも安全性においても良いことがないように思うのですが、やはり日本はいざというときのためにまとまった現金を手元に置いておく必要があるのでしょうか。日本は特殊詐欺の被害者が未だに後を絶たないようですが、現金社会が生み出すマイナス部分の一面であるように思えてなりません、銀行の窓口に行けばそれなりの額の現金が引き出せるのですから。ちなみに私が利用しているオーストラリアANZ銀行のATMの引出し上限は$2,000ですが、最近ではATMでも現金をおろすことがなくなり、カードの暗証番号を忘れてしまうほどです。$2,000以上は窓口扱いになるようですが、現金を$1,000単位でおろしたことがないので、一体上限いくらまでおろせるかわかりません。大体、オーストラリアの銀行の窓口業務はほとんどなくなっていて、支店も次々と閉鎖されています。

 

オーストラリアでは結構前から現金社会は終わっていて、銀行の窓口というリアルな現場は前述したように無くなりつつあり、業務はほとんどがオンライン化されています。ショッピングに関してもクレジットカードが昔から主流です。オーストラリア経済が好調な理由の要因として、オンライン空間を大量のお金が活発にぐるぐると駆け巡っていることが挙げられるかもしれません。日本には「お金は天下の回りもの」という諺がありますが、まさにオーストラリアではそれが実践されています。日本はなかなか現金社会から脱することができず、タンス預金という形でお金は一箇所に滞ってしまい、もちろんそれだけが原因ではありませんが経済面においても長期的に滞ってしまいました。

 

筆者自身の役割として、せめて日本とオーストラリアの両国のお金をお互いに消費し合い、両国の間でお金を巡回させるお手伝いができればと考えています。オーストラリア人が日本で消費したお金の極一部で結構ですので、オーストラリアへ投資していただければ(プロモーションや誘客活動など)、それによって日本への訪問者や消費を益々増やすことができます。この健全なお金の流れや巡回を確立することで、日本とオーストラリアは互いに長期的に発展することができ、次世代やその次の世代に向け、この良好な関係を自信を持って受け継ぐことができると思います。また、「お金」だけではなく「人」や「物」も巡回させることで、経済面だけではなく国際交流や文化交流においても、世界的にもトップレベルの堅い信頼関係が築けると思います。

 

本ブログを書いているうちに少し趣旨が変わってしまいましたが、凄いスピードで改革が進む他の先進国のシステムに、日本社会の仕組みや制度が遅れをとらないことを願いたいと思います。

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