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12月28日(水)クリエイトジャパンブログ

日本とオーストラリアにみるカスタマーサービスの違い

日本の飲食店や宿泊施設の皆さんからよく聞く話ですが、同じサービスを提供していても日本人とオーストラリア人のお客様では、評価や反応が全く違うようです。例えば飲食店であれば、お店が尋常なく混み合うとどうしても食事の提供が遅くなってしまいますが、オーストラリア人は特に気にすることもなく、ビールなど飲みながら仲間とおしゃべりしてワイワイ楽しく待っている一方で、日本人の場合はそのイライラ感が伝わってきて、とても緊張するとのことです。中には席を立ち、怒って帰られる方もいらっしゃるとか。宿泊施設の方のお話によると、同じ部屋、同じ料金、同じサービスを提供していても、ネットでの評価は日本人の方が厳しいようです。本日のブログはこの差について触れてみようと思います。

 

まず値段に対しての価値観の違いについてですが、日本のグルメ番組を観ていると、食レポーターがよく「このボリュームで、このお値段!」という表現をします。30年以上もデフレーションが続く日本では、モノの値段は安い方が良い、という価値観がいつの間にか広く浸透しているようです。一方、オーストラリアも数多くのグルメ番組がありますが、このようなお店の紹介の仕方はほとんどありません。30年間以上右肩上がりで経済が成長しインフレーションが続くオーストラリアでは、安さへの期待感が希薄で、高くて当たり前が大前提です。最近はCheap Eat(チープ・イート)と呼ばれるアジア系レストランや、フードコートでも一品10ドルくらいはするのではないでしょうか。ではどのように食事を選ぶのでしょう。自分が求めている「モノ」かどうか、が大きな要素となります。

 

例えば自分が食べたいラーメンであればそれなりの値段($40=約¥3600!)を払ってでも食べるし、自分が食べたくないラーメンであればいくら安くても食べることはありません。自分の嗜好というのが割とはっきりしていて、食事だけではなく、宿泊、航空券、アクティビティなども基本的には同じ価値観で判断し、購入することになります。オーストラリアで日本食レストランを営む日本人オーナーに以前聞いた話ですが、オーストラリア人がランチで使うお金は、おおむね自分の時給だということです。つまりオーストラリアの最低賃金は現在$22ぐらいなので、それくらいの値段で自分が求めているランチであればOKということになります。時給が数十ドル、数百ドルという人は、昼間から高級ワインを開けて豪華なランチをするのも普通に見かけます。ちなみにラーメンチェーン店の「一風堂」はオーストラリアで大成功しているのですが、ラーメンの価格は日本の倍近くです。その成功裡にはオーストラリア人の嗜好や価値観を分析・把握した上での、見事な戦略・戦術が存在します。一風堂だけではなくお弁当・定食の「やよい軒」も高級和食店として同じくオーストラリアで大成功を収めています。では値段だけではない、お店を決める際の要素について触れてみようと思います。

 

そもそも食事をすることに対しての概念が、日本人のそれとはいささか違うことを認識する必要があります。簡潔に表現すると、食事の目的がお腹を満たすことはもちろん、その時間や空間を愉しむことにもあるのです。前述したように、オーストラリア人がなぜ料理を待たされても気にしないかと言うと、その待っている時間も彼らにとっては愉しむためのプロセスに過ぎない、と言えばわかりやすいでしょうか。随分前のことですが、ちょっと高級なシドニーのお蕎麦屋さんにこんな話を聞いたことがあります。まだオーストラリアでの営業に慣れない頃、日本人感覚で早く料理を提供するのが当たり前だと考えていたところ、あるお客さんに「そんなに一挙に料理を出されても困る。あなたは我々にさっさと食事をして早く帰ってほしいのか」と言われたそうです。これは極端な例だとは思いますが、長年オーストラリアに住んでいる私自身も、日本で食事する際に一挙に料理が出てくるのは、今でも少し違和感があり、そんなに急いで出さなくても良いのに、と思うことがあります。また、日本ではお料理が出てくるまでの間「お通し」を提供して、お客さんをもてなす仕組みがあります。ところがこの「お通し」は外国人にとって理解できない人もいるようで、なぜ好きでもないし頼んでもいない料理が出てきてお金も取られるのか、ということになりかねない日本独特のルールです。とはいえ日本人には浸透している商習慣なので難しいところです。ちょっとしたこぼれ話になりますが、私自身8年ぐらい前に出張で訪れた観光地で居酒屋に入店した際、豪華なお通しが出てきたので感動していたら、2千円チャージされていたのでビックリしたという苦い思い出があります。普段は滅多に文句を言わないオーストラリア人でも、流石にこのようなお店に当たるとクレーム必至だと思います。

 

 最後に「雰囲気」と「サービス」についても触れておこうと思います。日本では「美味い!安い!早い!」を売りにしているお店がたくさんあると思います。中には職人肌の頑固親父が売りで、私語厳禁などでも繁盛しているお店があるようですが、オーストラリアではそういった変わったルールがあるお店は受け入れられないでしょう。前述した通り、美味しいかどうかは個人の好みによって判断が違ってきますし、「安い」「早い」は急ぎのランチタイムなどには好まれますが、基本的に自分が好きなもの、認めたものを購入します。オーストラリアのグルメサイトが特に重んじているのは「味」「雰囲気」「サービス」です。「味」「雰囲気」「サービス」は、各自の価値観や物価に適しているかどうかで判断されます。この三つの評価のうち「味」は評価が高いのに越したことはありませんが、「雰囲気」については、日本の飲食店はかなりアドバンテージがあるように思います。昔ながらの古いお店でも、日本らしい雰囲気があると「Cool!」となります。「サービス」については人により評価がまちまちなのですが、私は日本のきちんとしたマニュアルに沿ったサービスがどちらかと言うと苦手で(コンビニでコチラを見ずにいらっしゃいませ〜という習慣や、大手居酒屋で必要以上に大声を出すルールなど)、オーストラリアのマニュアル化されていない個人のさりげないサービス(入店や退店する際にチラッとコチラを見て微笑んだり、手を振ったりする習慣など)が居心地良いです。少し脱線してしまいましたが、郷に入れば郷に従えで、日本では日本独自のルールがあるのですから、オーストラリア人には日本のサービスの本質でもある、「おもてなしの心」を体感してくれるととても嬉しく思うのです。

 

「一風堂」や「やよい軒」が成功しているキーポイントは、そのテーマ性とブランディングにあると私は考えます。「一風堂」は現在オーストラリア全土で7店舗ほど運営していますが、どのお店も行列必至の人気店です。オシャレな内装とセンスある空間。ワインに合う気の利いたおつまみの数々。入店するまでにくつろげる素敵なバーカウンター。つまり「一風堂オーストラリア」のコンセプトは、お腹を満たすための「ラーメン屋」ではなく、カジュアルかつおしゃれに女子やカップル、ビジネスマンが利用する「ラーメンダイニング」や「ラーメンバー」なのです。まずはワインやビールに合った見た目も美しい前菜から始まり、定番の「白丸」や「赤丸」といった博多ラーメンで締める、という飲食スタイルが定着しています。あるグルメサイトの紹介では、アルコール代を含まずに一人平均単価がおおよそ$35とのことです。

 

リピーターを増やすにはカスタマーサービスの向上が必要不可欠だとよく言われます。外国人観光客の対応は難しいと思われるかもしれませんが、そんなことはありません。ある程度の国民性や嗜好を掴んでしまえば、日本人観光客の対応よりも神経を使わずに、楽しみながら対応できるはずです。長い文章になってしまいましたが、少しでもご参考になれば大変嬉しく思います。

12月23日(金)クリエイトジャパンブログ

ANAが羽田⇄シドニー便を1月22日から増便へ

ANAは12月20日冬のダイヤを一部変更することを発表し、羽田⇄シドニー便は1月22日から週10往復となります。先月のブログでも触れた通り、オーストラリアから日本への直行便の飛行機代金が高騰しています。燃料費や人件費が高くなり、旅行需要も増えていることが背景にあると思いますが、エコノミーの中でも一番安いクラスのチケットはほとんどなくなり、安くて往復1700ドル弱以上の座席しか空いてない状況です。特に年末から1月中旬にかけてのフライトはエコノミー往復2300〜5200ドルくらいで販売されているようです。

 

それでも今冬シーズンのインバウンド集客はどのエリアも好調のようで、各地で人手不足が深刻だという話を耳にします。この数年はコロナの影響で集客に頭を痛めていた方々が、今は人材確保に相当苦労しているようです。前々から本ブログで、今冬シーズンはインバウンドに対応できる人材確保が重要なキーポイントになると重ねて書いてきましたが、それがいよいよ現実となってきました。とは言えほんの数ヶ月前までは、日本の国境がいつ再開されるかはわからない状況が続いていたのですから、どれほどの人材を確保すればいいのかは、なかなか判断が難しかったのではないかと思います。

 

つまるところ、これも繰り返し書いてきましたが、政府の国境再開の判断が他国並みに数ヶ月早ければ、予約状況などを鑑みてもう少し計画的かつ現実的に人材を募集できたのではないかと思います。実際オーストラリアでは日本がコロナ対策に躍起になっていた数ヶ月前には、学生ビザ滞在者の就労時間延長、人手不足が予想される業界の移民受入強化、学生ビザ申請料の無料化など、矢継ぎ早に国会で法案化し人材不足に備えてきました。それでも人材確保は今も深刻な問題なのですから、日本のインバウンド業界の人手不足の深刻さは尋常ではないと想像できます。今冬シーズンは何とかして乗り切るしかないと思いますが、来シーズンはインバウンドが100%復活することを見越して、早め早めに計画し、具体的な施策に取り組むことが肝心かと思います。

 

6〜7年ぐらい前だったと思いますが、ニセコに出張した際にラーメン屋さんのご主人から聞いた話です。本来であれば冬シーズンは7days openで稼ぎたいところだが、どうしてもスタッフが集まらず泣く泣く週休2日で営業している、と心底残念そうに話してくれました。来年以降日本各地でこのような話を聞くことがないよう、国や行政がこの問題に対して真剣に取り組むことを強く望みます。

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