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7月12日(火)クリエイトジャパンブログ

オーストラリア各地で安倍元首相を偲ぶ

 7月8日の安倍元首相のニュースはオーストラリアでも衝撃が走りました。どのテレビ局も緊急特番を組み、繰り返し現場の映像を流していましたが、緊急速報のテロップの文字が「Shot(狙撃される)」から「assassinated(暗殺される)」に変わったときは、現実に起こった本当のことなのだろうかとなかなか信じることができませんでした。思想や政治的なことを通り越して、多くの日本人はそのように思ったのではないでしょうか。私自身未だに朝目が覚めるたびに、心にポッカリと穴が空いた気持ちになります。

 

7月10日、シドニーのオペラハウスは日本国旗が投影され、メルボルンのフリンダースストリート駅は日の丸色の赤と白に染められ、安倍元首相への哀悼の意が表されました。ブリスベンやアデレードのランドマークの建造物も、同じように赤と白に染められました。それらの現場にいた日本人の中には、オーストラリア人からお悔やみの声をかけられ、強くハグされた人もいたようです。

 

そこで今回のブログは筆者個人の思い出となりますが、安倍元首相のオーストラリアにまつわるエピソードをいくつかご紹介できればと思います。

 

2017年1月、安倍元首相は当時のターンブル豪首相との首脳会談のために来豪され、それに先立ちシドニーヒルトンで開催された「日豪観光セミナー」でもスピーチされ、私も参列させていただきました。安倍元首相のスピーチは英語の原稿を読み上げるのではなく、ご自身の日本語を同時通訳するスタイルで行われましたが、その内容は「世界的なスノーリゾートとして有名になった北海道、ニセコの雪の魅力を発見して、全世界に広めてくれたのはオーストラリアのスキーヤーの皆さんだった」といった話で始まり、「今や北海道だけではなく日本各地のスキーリゾートが世界中の観光客で賑わっているのは、オーストラリア人の皆様のお陰だ、一国を代表して心からお礼申し上げる」といったものでした。そのスピーチを聞いて日本への観光プロモーションに携わる者として、大変有り難く心強く感じたのですが、スピーチの原稿はてっきりオーストラリア人向けに官僚が用意したものだと思いました。

 ところがそのあと元首相は「オーストラリア人の友人の誘いで毎年のようにニセコにスキー旅行に家族で出かけ、友人の別荘に泊まり、スキーを楽しみながら、オーストラリア人で賑わうゲレンデを感慨深い思いで眺めていた。いつの日かターンブル首相と一緒にニセコでスキーを楽しみたい」と、自身の経験を披露しながら述べられました。安倍元首相はじめ、松山日本政府観光局理事長、田川日本旅行業会会長らが出席された日豪観光セミナー及び昼食会は、私にとって心に残る大切な思い出となりました。

 もう一つ安倍元首相で思い出されるのは、2014年の暮れに発生した白馬での地震の際です。風評被害を心配しておられる地元の方々に対して、オーストラリアの旅行会社やすでに白馬への旅行を予約しているオーストラリア人旅行者と連絡を取り合い、旅行のキャンセルなど全く心配がないことを、安倍元首相のFB投稿をシェアして情報配信しました。以下、安倍元首相のFBからの引用となります。

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長野県北部での地震によって被害に遭われた皆様へお見舞いを申し上げます。
本日、白馬村へ被害状況の視察にいってきました。
冬がもうすぐそこまで迫っている中で、被害者の皆様が寒い思いをしないよう万全な対応をとってまいります。
同時に、白馬村にはオーストラリアをはじめ、世界中からスキーシーズンには観光客が訪れます。
スキー場側は宿泊先も含めほとんど被害は無く、受け入れは万端とのことです。
地震による風評被害を払しょくするためにしっかりと情報を発信していこうと思います。安倍晋三
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 オーストラリアから日本への旅行が好調な要因はたくさんありますが、両国が政治的にも経済的にも良好な関係であることが前提です。安倍元首相とアボット元豪首相が、個人的にとても仲が良かったことは有名な話ですが、その良好な関係はその後ターンブル元豪首相やモリソン前豪首相にも引き継がれ、こんにちの日豪の強固な関係維持に至っています。キャンベラの国会議事堂で日本の首相として唯一スピーチした安倍元首相の日豪関係への功績は計り知れず、その想いはオーストラリア人にとっても同じでしょう。オーストラリア各都市のアイコンが日の丸で彩られたことが何よりもそれを物語っています。

 安倍元首相のご冥福を心よりお祈りいたします。

7月6日(水)クリエイトジャパンブログ

オーストラリアはワクチン未接種者でも入国可能に

 オーストラリア政府は、オーストラリア入国の際に必要だったワクチン接種証明の提示を7月6日から撤廃し、ワクチン未接種者でも自由に入国できるようにすると発表しました。また、同日からDPD(Digital Passenger Declaration)も不要になります。この決定により観光客を含む全ての人が自由に入国できるようになりますが、オーストラリアの観光産業は今後一気に活気づくことになるのでしょうか?あくまでも筆者個人の見解ですが、現在の豪ドル高や物価高を考えると、そう簡単ではないのかとも思います。特に円安の日本からの観光客にとっては、コロナ前と比較すると割高な旅行になってしまうのではないでしょうか。一方、教育産業にとっては大きな追い風になる可能性があります。サービス産業における深刻な人手不足が課題になっているオーストラリアは、政府がすでに海外留学生の受入人数枠の拡大を決定しており、人材確保に躍起です。また、留学生にとってオーストラリアの授業料や生活費は割高に感じる反面、飲食店でのアルバイトの稼ぎだけでも十分に生活できるほどの最低賃金が定められており(日本の約2.5倍)、オーストラリア留学を決定する要因にもなっているようです。

 

 比較して日本は本日時点で海外からの観光客はまだ自由な個人旅行はできず、ワクチン接種証明や訪日前のPCR検査も必要です。1日も早くオーストラリア並みの対応を願うばかりですが、日本ではオミクロン株のBA.4とBA.5の感染拡大に関するニュースが大きく取り上げられていることが少し気になります。実はオーストラリでもBA.4とBA.5の感染状況は日本と同様に急激に増加傾向にあり、ニュースでも取り上げられているのは日本と同じです。では何が違うかというと、一番大きな差はメディアの放送の仕方と行政の記者会見の内容だと思います。オーストラリアでも行政のトップや保健省の責任者が、市民に対して感染予防とワクチン摂取を呼びかけメディアもそれを取り上げていますが、最近筆者が観た日本のニュースでは、街頭インタビューでの不安な声がクローズアップされ、感染が広まっている地域の行政トップによる「緊急事態」という言葉を発した記者会見の様子が流れていました。行政のトップが「緊急事態」だと発言することは、市民にとってはやはり相当インパクトがあり、また以前の制約された生活に戻ることが脳裏をよぎるのではないでしょうか。

 

 コロナや物価高など世界共通の課題においては、各国の政策や政治的判断が国の将来を大きく左右するのはもちろんのことですが、各国のメディアの姿勢や取り上げ方の差は国力の差につながる大きなポイントではないかと思います。国民の健康第一がどの国でも最も重要ではありますが、国民を経済的な窮地に追い込むことなく、メディアや国民感情によって経済支援政策の実施や水際対策の緩和が、先延ばしや後戻りしないことを願いたいと思います。

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