6月20日(月)クリエイトジャパンブログ
オーストラリア・シドニーの冬の風物詩「Vivid Sydney」に見るインバウンドビジネス
オーストラリアは暦上で6月から8月までが冬なのですが、この時期、特に夜のシドニーは寒いので、極端に人出が減り海外からの観光客も少ないため、ビジネス的には大変厳しい時期でした。と過去形で書いたのには理由があり、2009年に始まった「Vivid Sydney」と呼ばれる「光と音とアイデアの祭典」が5月下旬から6月中旬まで毎年約3週間開催されるのですが、今では観光業に巨額をもたらすシドニーを代表する一大イベントとなっているからです。この2年間はコロナ禍で開催中止となっていましたが、今年は3年振りに開催され、コロナ前を上回る盛り上がりでした。そこで今回のブログは日本のインバウンドに直接関係はありませんが、オーストラリアのインバウンドビジネスから何かヒントを得ていただければと思い、「Vivid Sydney」の話題をお届けしたいと思います。
この祭典を簡単に説明すると、シドニーの街中が色とりどりの光でライトアップされ、建物などに映し出されるプロジェクションマッピングや光のアート、眩いばかりのイルミネーションやライブ音楽などを楽しめるイベントです。地元市民はもちろん国内外の多くの観光客も訪れ、その数はコロナ前で240万人を記録し、1億4300万豪ドル(現在のレートで約140億円弱)の経済効果をもたらしました。今でこそドローンを使った天空ショーや大掛かりな噴水ショーなども鑑賞できますが、はじまり当初は小規模でひっそりと開催されていました。筆者も当時のことをよく覚えていますが、正直それほどパッとしないイベントだなと思った記憶があります。実績がなかったので最低限の予算でスタートしたのでしょうか、定かではありませんが。ところがその後オペラハウスやロックス、ダーリングハーバーといった有名観光スポットもイベント会場に加わったため、認知度や知名度がアップし、今では冬のシドニーには欠かせない風物詩としてすっかり定着しました。
このイベントに関して筆者が注目したい点が2つあるのですが、その一つは冬の閑散期に最大限の経済効果をもたらしたことです。当時の「Vivid Sydney」は、街中にある建造物をそのままスクリーンに見立て、そこにプロジェクターを使って映像やアニメーションを投影し、アート作品をそのまま映し出す手法が中心でした。もちろんプロジェクターというハード機器や設置にそれなりの予算はかけたと思いますし、NSW州政府の観光イベントを管理する機関「Destination NSW」のプロジェクトメンバーやデザイナーなどの人件費も結構な支出だったのではないかと思われます。発足当時の経済効果は微々たるものだったことでしょうが、先にも述べたとおりここ数年(コロナ禍を除く)の人出の多さは突出しています。そしてプロジェクター・マッピングやライティングの優れているところは、電源を切ってしまえばあっという間に元の街並みに戻るところです。昼間のオペラハウスは普通に鑑賞できる建造物ですが、その象徴として夜はいろいろなイベントに合わせて姿を変貌させています。最近ではVivid Sydney以外にも「Australia stands with Ukraine(オーストラリアはウクライナと共に)」のメッセージを発するためにウクライナ国旗を身にまとったり、東京オリンピック閉幕後はまだコロナ禍で凱旋パレードができなかった選手を讃えるために、彼らの画像を連日映し出したりしていました。
そしてもう一つの注目点は、このイベントによって若手クリエイターたちを啓発し、その才能を発掘する機会にもなっていることです。「光と音の祭典」として始まったこのイベントは、その後「光と音とアイデアの祭典」、つまり「アイデア」という言葉が加わり、期間中はクリエイティブ産業を中心とした講演、フォーラム、ワークショップ、トークショーも開催されます。また、「Vivid Light」「Vivid Music」「Vivid Ideas」の他、2019年から「Vivid School」というストリームも追加され、若者の創造性や革新を助勢するための教育プログラムも実施されています。
いかがでしょうか?この成功事例を日本ですぐに活用できるわけではありませんが、アイデア次第で最初は少ない予算でもスタートでき、国内外の観光客も獲得でき、さらには次世代を担う人材を育てることができるイベントの実例として、今後のインバウンドビジネスのヒントになればとても嬉しく思います。
実際の映像はこちら→https://www.youtube.com/watch?v=L9bLRnTC3k4
公式ウェブサイト→https://www.vividsydney.com/
6月9日(木)クリエイトジャパンブログ
各地でパスポート更新手続きの大行列が発生
シドニーやメルボルンのパスポート・オフィスに、パスポートを更新や申請状況を確認する人たちで連日大行列が発生している、と各テレビ局が伝えています。この2年間はパンデミックのため更新の必要がなかったのですが、ここに来て各国が国境を再開し、エアライン各社も通常の運行に戻していることから、パスポートが失効した人たちが一挙にパスポートの申請をしているようです。また、すでに申請している人たちも、パスポート・オフィスから一向に連絡がなく電話も繋がらないので、手続きがどうなっているか確認に訪れる人も大勢いるようです。
パスポート・オフィスも人員をカットしていたところに一挙に更新や再申請の申し込みが増えたので、スタッフを増員して対応にあたっているとのことですが、需要に全く追いつくことができずこのような事態を引き起こしているとのことです。ちなみにこの2年間でパスポートを失効した人は140万人にのぼるとのことで、1日に1万から1.2万件の申請があるそうです。
実際行列に並んでいる人や窓口で対応している人のことを考えると大変気の毒だとは思うのですが、いよいよ海外旅行需要が完全に復活する実感が湧いてくるニュースでした。
行列の画像や動画はこちらを参照→ https://www.9news.com.au/national/aussies-wait-for-hours-to-renew-passports-in-sydney/c73f0861-f922-4cf8-b045-14119952138a